介護保険の苦情・相談対応業務 介護保険の苦情・相談について
◆苦情対応業務の目的
制度における原則
- ●要介護度に応じた自立支援のためのサービス
- ●本人による選択と自由契約に基づくサービス
- ●運営基準とサービスの質の向上
介護保険サービスは、サービス種類ごとに定められた事業運営の基準(指定基準)を満たし指定を受けた事業所・施設が提供する。基準には、サービス提供の前提となる人員基準・設備(施設)基準、サービス提供に関する運営基準がある。
基準はサービス事業が目的を達成するために必要な最低限度を定めたもので、指定を受けた事業所は、常に事業運営とサービスの質の向上に努めなければならない。また、サービスは、自ら行う質の評価等により、常に利用者の立場に立って提供することが求められている。
苦情対応の意義
- 1.権利擁護
- 介護サービスの利用者は、本来自分でサービスを選択して契約をしているという意味では、事業者とは対等の立場でサービスを利用することができるはずであるが、現状は、サービスを受けているということから、要望や苦情が言いにくい状況にあると考えられる。また、もともと、利用者と事業者では介護保険等に関して持っている情報量や知識に差(違い)があるので、契約を行う前提として利用者の保護が必要となる。その権利擁護の一つとして、苦情対応業務としての機能がある。
- 2.サービスの質の維持・向上
- 苦情対応の目的は、利用者・家族等からの苦情を通して、利用者の権利を擁護することにあると同時に、事業者に対して調査し、指導、助言を行うことにあるが、実際には苦情に至った経緯やサービスの質の向上を事業者と共に考えることで、サービスの質が一定の水準で確保されることに意義がある。
- 3.介護保険制度のサービス内容及び介護諸費用の適正化
- 苦情対応の業務を通じて、介護保険制度が真に所期の目的を達成しているか、不適正・不正な介護サービスが提供されていないか、といったチェックもなされることになり、介護保険制度全体の安定に資する機能がある。
苦情対応の位置づけ
介護保険制度における苦情対応は、「運営基準」及び「介護保険法」に明示がある。
「運営基準」には、事業者は利用者からの苦情に迅速かつ適切に対応すべきことや市町村が第一次的な苦情受付窓口として位置付けられていることが明示されている。
介護保険法第176条には、介護保険の円滑な運営のために、国民健康保険団体連合会(以下、「国保連合会」という。)において、被保険者等からの苦情を受け付け必要な指導及び助言をすると明示がある。国保連合会が広域的対応が可能であること、並びに介護サービスにおいて第三者機関であること、審査・支払業務を通じて、受給者及び事業者に関する情報を保有すること等の理由によって、国保連合会は介護保険法上の苦情処理機関として位置付けられている。
「運営基準」平成11年厚生省令第37号~41号、平成18年厚生労働省令34号~37号から抜粋( 例:訪問介護 )
(苦情処理)
第三十六条 指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に係る利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、前項の苦情を受け付けた場合には、当該苦情の内容等を記録しなければならない。
3 指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に関し、法第二十三条の規定により市町村が行う文書その他の物件の提出若しくは提示の求め又は当該市町村の職員からの質問若しくは照会に応じ、及び利用者からの苦情に関して市町村が行う調査に協力するとともに、市町村から指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
4 指定訪問介護事業者は、市町村からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を市町村に報告しなければならない。
5 指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に係る利用者からの苦情に関して国民健康保険団体連合会(国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)が行う法第百七十六条第一項第三号の調査に協力するとともに、国民健康保険団体連合会から同号の指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
6 指定訪問介護事業者は、国民健康保険団体連合会からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を国民健康保険団体連合会に報告しなければならない。
介護保険法からの抜粋
(連合会の業務)
第百七十六条 連合会は、国民健康保険法の規定による業務のほか、次に掲げる業務を行う。
(中略)
三 指定居宅サービス、指定地域密着型サービス、指定居宅介護支援、指定施設サービス等、指定介護予防サービス、指定地域密着型介護予防サービス及び指定介護予防支援の質の向上に関する調査並びに指定居宅サービス事業者、指定地域密着型サービス事業者、指定居宅介護支援事業者、介護保険施設、指定介護予防サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者及び指定介護予防支援事業者に対する必要な指導及び助言
(後略)
その他 ( 介護保険の苦情対応と関連のある法律等 )
社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律
(平成十二年法律第百十一号)関係[平成12年6月7日公布・施行]
社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)
(運営適正化委員会)
第八十三条 都道府県の区域内において、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため、都道府県社会福祉協議会に、人格が高潔であって、社会福祉に関する識見を有し、かつ、社会福祉、法律又は医療に関し学識経験を有する者で構成される運営適正化委員会を置くものとする。
(運営適正化委員会の行う苦情の解決のための相談等)
第八十五条 運営適正化委員会は、福祉サービスに関する苦情について解決の申出があったときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するものとする。
2 運営適正化委員会は、前項の申出人及び当該申出人に対し福祉サービスを提供した者の同意を得て、苦情の解決のあっせんを行うことができる。
(運営適正化委員会から都道府県知事への通知)
第八十六条 運営適正化委員会は、苦情の解決に当たり、当該苦情に係る福祉サービスの利用者の処遇につき不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。
◆介護保険制度の苦情・相談処理概要
法律等で定められた苦情等の流れ図
介護保険制度の苦情・相談窓口
- 1.居宅サービス事業者、介護予防サービス事業者及び介護保険施設
- サービス事業者等は、「苦情受付窓口」を設置、苦情処理の体制及び手順等、当該サービス事業者等における苦情を処理するために構ずる措置の概要について明らかにし、利用申込者又は家族にサービス内容を説明する文書に、苦情に対する措置の概要についても併せて記載するとともに、事業所に掲示する。
事業者の苦情相談窓口は契約書、重要事項説明書に記載
- 2.居宅介護支援事業者及び介護予防支援事業者
- 支援事業者は、「苦情受付窓口」を設置、苦情処理の体制及び手順等、当該サービス事業者等における苦情を処理するために構ずる措置の概要について明らかにし、利用申込者又は家族にサービス内容を説明する文書に、苦情に対する措置の概要についても併せて記載するとともに、事業所に掲示する。
また、要介護者の居宅サービス計画・要支援者の介護予防サービス計画の作成にあたり、居宅サービス事業者との調整等を図るため、支援事業者は利用者及び居宅サービス事業者双方と接点があり、居宅サービス等の苦情に関して、その内容を十分に把握の上、関係機関と連携し、迅速かつ適切な処理を行うものとする。一方、居宅サービス等に対する苦情の国保連合会への申立に関して、利用者に対し必要な援助も行う。
事業者の苦情相談窓口は契約書、重要事項説明書に記載
担当のケアマネジャー(介護支援専門員)の連絡先は、サービス利用票、ケアプラン、契約書、重要事項説明書に記載
- 3.市町村等
- 保険者として、利用者の苦情全般に対する直接的な窓口となるとともに、各関係機関と連携を図りながら、苦情や相談に関する情報の集約・調整を行う第一次的処理機関であり、事業者に対する調査、指導助言を行う。
また、地域密着型サービスの事業者指定、報告聴取等、事業者に対する指導の権限を持つとともに、必要に応じて指定取り消しなどの行政処分を行う。
市(区)町村介護保険窓口は各市(区)町村介護保険担当
- 4.国保連合会
- 市町村において対応困難な介護サービスに対する苦情に対応するため、事務局に介護サービス苦情処理委員会を設置している。事務局は苦情申立に対し、調査を実施し、介護サービス苦情処理委員会による審理を行い、指定サービス事業者等に、必要に応じ介護サービスの質の改善に向けた指導・助言を行う。
- 5.大阪府
- 居宅サービス事業者、居宅介護支援事業者、介護保険施設、介護予防サービス事業者(以下「居宅サービス事業者等」という。)の指定等を行う機関として、居宅サービス事業者等に対して指導の徹底を図るとともに、当該苦情を迅速かつ適切に処理するため、関係機関に対する広域的・総合的な指導・調整を行う。また、指定基準違反等が疑われる場合には、都道府県又は保険者が調査を実施し、結果によっては事業者に対し「指定取り消し」等を行う。
大阪府は介護保険審査会を運営し、要介護認定又は要支援認定に関する処分(決定)や保険料等の保険給付に関する処分(決定)に不服がある場合等は、「介護保険審査会」で受け付けている。 - 6.大阪府社会福祉協議会運営適正化委員会(福祉サービス苦情解決委員会)
- 福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するための委員会を設置する。運営適正化委員会は、福祉サービスに関する苦情について解決の申し出があったときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情にかかる事情を調査する。また、苦情の申出人に対し福祉サービスを提供した者の同意を得て、苦情解決のあっせんを行う。
場所:大阪市中央区中寺1-1-54(大阪社会福祉指導センター1階)
曜日:月曜日~金曜日
(土、日、祝日、年末年始は除く)
時間:午前10時~午後4時
電話:06-6191-3130
FAX:06-6191-5660
* 居宅サービス事業者等の指定及び指導等権限の市町村への移譲
平成23年の介護保険法の改正により、それまで大阪府が実施していた居宅サービス事業者等の指定及び指導等権限が平成24年4月1日から政令指定都市・中核市に移譲された。また、政令指定都市・中核市以外の市町村は大阪府版地方分権制度により指定及び指導等権限が順次移譲されている。
令和2年4月現在、大阪府が権限を有する地域は、守口市、門真市、四條畷市、摂津市、大東市、交野市、藤井寺市、羽曳野市、島本町の8市1町で、それ以外は各市町村(広域連合含む)へ移譲されている。
なお、指定居宅介護支援事業者の指定及び指導等権限については、平成30年4月から8市1町も含め、全市町村へ移譲されている。
≪広域により実施している市町村≫
・守口市、門真市、四條畷市(くすのき広域連合)
・池田市、箕面市、豊能町、能勢町(広域福祉課:箕面市)
・富田林市、河内長野市、大阪狭山市、太子町、河南町、千早赤阪村(南河内広域福祉課:富田林市)
・岸和田市、泉大津市、貝塚市、和泉市、高石市、忠岡町(広域事業者指導課:岸和田市)
・泉佐野市、泉南市、阪南市、熊取町、田尻町、岬町(広域福祉課:泉佐野市)
その他の高齢者福祉等の相談窓口
- 1.市(区)町村高齢者福祉担当窓口
-
- 2.地域包括支援センター
- 高齢者やその家族からの相談を受ける。また、高齢者の虐待防止等の権利擁護などを行う地域介護の拠点であり、市(区)町村が設置する。
- 3.休日夜間福祉電話相談
- 休日や夜間に高齢者や障がいのある方を対象とした福祉及び権利擁護に関する相談に電話で応じます。
◆大阪市にお住まいの方
○ 相談日時
休日:24時間対応(土曜日・日曜日・祝日・年末年始12月29日~1月3日)
夜間:平日の午後5時から翌朝9時
電話:06-4392-8181
- 4.認知症高齢者などへの支援サービス
日常生活自立支援事業(平成19年度「地域福祉権利擁護事業」から名称変更) - 認知症高齢者、知的障がい、精神障がいなどにより判断能力が不十分な方へ福祉サービスの利用援助や日常的なお金の管理などを行う。
- 内 容:福祉サービスなどの利用援助サービス
日常的金銭管理サービス
通帳や証書類、印鑑など書類の預かりサービス
- 対象者:自己の判断のみでは意思決定に支障のある認知症高齢者、知的障がい、精神障がいのある方などまた、契約時に意思の確認ができる方
- 利用料:実施機関に問い合わせ
- 実施者:市(区)町村社会福祉協議会や地域包括支援センターなど
◆国保連合会への苦情・相談及び苦情申立
苦情・相談の取り扱い
本会では、介護保険上の指定サービスの内容に関する苦情相談窓口として、電話・来所等により相談を受けている。
苦情相談窓口で解決が図られる場合が殆どであるが、相談窓口では納得が得られない相談者からは、苦情申立となる。
★苦情・相談の窓口
〒540-0028
大阪市中央区常盤町1丁目3番8号 中央大通FNビル内 5階
大阪府国民健康保険団体連合会 介護保険室介護保険課
電話番号06-6949-5418
・交通案内 大阪メトロ谷町線・中央線『谷町四丁目』駅6番出口から西へ徒歩2分
※来所される場合は、できるだけ事前にご連絡をお願いします。
★お問い合わせ時間及び休日
平日(月曜日から金曜日)9時~17時まで(12時30分~13時15分を除く)
ただし、土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日、及び12月29日・30日・31日、1月2日・3日を除く
苦情申立の取り扱い
本会で対応できる内容
- 1.介護保険上の指定サービスであること
国保連合会の苦情処理の対象となるのは、指定居宅サービス、指定居宅介護支援、指定介護予防サービス、指定介護予防支援、指定地域密着型サービス及び指定施設サービス等の指定事業者が行う指定サービスであって、基準該当サービスや市町村特別給付は原則対象とならない。
- 2.大阪府内の事業所の案件(苦情対象事業所が他の都道府県にある場合は、事業所所在地の国保連合会が調査を行う。)
- 3.(1)市町村域を越える案件
(被保険者の居住地と苦情対象となる事業所所在地が異なる場合)
申立人居住の市町村と事業者所在市町村が別の場合には、保険者市町村にとっては、調査ないし指導が行き届かないことも想定されることから、このような場合には、国保連合会で苦情を取り扱うこととする
- (2)苦情を市町村で取り扱うことが困難な場合
- ○市町村と利害関係が輻輳する場合(公設の事業所等)
- ○法律解釈が必要な場合
- ○調査、指導が難しく苦情処理委員が取り扱った方が良い場合
- 4.申立人が国保連合会での処理を希望する場合
3の場合以外であっても、申立人が国保連合会での処理を特に希望する場合には、国保連合会で苦情を取り扱うこととする。
本会で対応できない内容
- 1.すでに訴訟を起こしている内容
- 2.訴訟が予定されている内容
- 3.損害賠償等の責任の確定を求める内容(過失の有無・割合等)
- 4.医療に関する内容や医師の判断に関する内容等(医療内容・医療制度等)
- 5.契約の法的有効性に関する内容
- 6.行政罰等(事業所の指定取消、従事者の資格の取消等)を求める内容
- 7.要介護認定や介護保険の制度に関する内容
苦情申立対応フロー図
苦情申立の対応手順
- 1.苦情申立書受付
- 2.苦情処理委員会開催 → 調査の必要性及び調査内容の検討
- 3.調査票による調査及び現地調査
- 4.苦情処理委員会開催 → 回答書及び現地調査結果の検討
- 5.苦情処理委員から事業所への指導・助言の通知
- 6.申立人への結果通知
- 7.改善計画書の提出 → 苦情処理委員会から求めた場合
苦情申立書
本申立書は、介護保険給付の対象となる指定事業者が行うサービスで、国保連合会へ苦情を申し立てる際に提出する様式である。原則として、書面により苦情の申し立てを行う。これは、申立人意思の確認や苦情の主訴を明確にするためである。苦情申立をするには、苦情申立書と個人情報の取り扱いに関する同意書が必要となる。
用紙は、以下の「苦情申立書」、「同意書」、「介護サービスに関する苦情申立をされる皆様へ」から印刷できるほか、市町村等の介護サービス苦情受付窓口に設置しています。
※なお、苦情申立書は必ず提出する前に写しを取り、手元に保管ください。
介護サービスに関する苦情申立をされる皆様へは必ずお読みいただき、保管ください。
・
「苦情申立書」
・
「同意書」
・
「介護サービスに関する苦情申立をされる皆様へ」
記入方法
- ●この申立書を書いた人(申立人)
本人を原則としているが、代理人も可能である。
- ●サービス利用者及びサービス利用希望者(被保険者又は受給者)
申立人本人の場合は記入不要である。被保険者番号や受給者番号はわからなければ記入しなくても構わない。
- ●記入事項
事実のあった年月日、苦情にかかる事実を行った事業者名と電話番号を記入する。申し立て内容を簡潔にまとめ、申し立て趣旨に記入する。
申立書 投函用 封筒の例

苦情申立書を提出する前に
提出する前に必ず以下をご覧ください。
・
苦情申立書の提出にあたって
連合会で対応できる内容かどうかを確認する必要があるため、提出する前にまずは、ご連絡をください。
電話:06-6949-5418
FAX:06-6949-5417
◆身体拘束に対する考え方
平成12年の介護保険制度の施行時から、介護保険施設などにおいて高齢者をベッドや車椅子に縛りつけるなど身体の自由を奪う身体拘束は、介護保険施設の運営基準において、「サービスの提供にあたっては、入所者の『生命又は身体を保護するため緊急やむ得ない場合を除き』身体拘束を行ってはならない」とされており、原則として禁止されている。身体拘束は、高齢者に不安や怒り、屈辱、あきらめといった大きな精神的な苦痛を与えるとともに、関節の拘縮や筋力の低下など高齢者の身体的な機能をも奪ってしまう危険性がある。また、拘束されている高齢者を見る家族にも混乱や苦悩、後悔を与えることになる。 高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利を侵害される状態や生命、健康、生活が損なわれるような状態に置かれていることは許されるものではなく、身体拘束は原則としてすべて高齢者虐待に該当する行為と考えられる。
身体拘束の具体例
- 1.徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 2.転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 3.自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 4.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
- 5.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 6.車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
- 7.立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
- 8.脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 9.他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 10.行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- 11.自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
緊急やむを得ない場合の対応
介護保険指定基準上、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」には身体拘束が認められているが、これは、「切迫性」「非代替性」「一時性」の三つの要件を満たし、かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されているケースに限られる。
- ※「緊急やむを得ない場合」の対応とは、これまでにおいて述べたケアの工夫のみでは十分に対処できないような、「一時的に発生する突発事態」のみに限定される。当然のことながら、安易に「緊急やむを得ない」ものとして身体拘束を行うことのないよう、次の要件・手続に沿って慎重な判断を行うことが求められる。
【参考】 ★介護保険指定基準の身体拘束禁止規定 「サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」
- (1) 三つの要件をすべて満たすことが必要
- 以下の三つの要件をすべて満たす状態であることを「身体拘束廃止委員会」等のチームで検討、確認し記録しておく。
- 1.切迫性
- 利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
- *「切迫性」の判断を行う場合には、身体拘束を行うことにより本人の日常生活等に与える悪影響を勘案し、それでもなお身体拘束を行うことが必要となる程度までに利用者本人等の生命または身体が危険にさらされる可能性が高いことを、確認する必要がある。
- 2.非代替性
- 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
- *「非代替性」の判断を行う場合には、いかなるときでも、まずは身体拘束を行わずに介護するすべての方法の可能性を検討し、利用者本人等の生命または身体を保護するという観点から、他に代替手法が存在しないことを複数のスタッフで確認する必要がある。 また、拘束の方法自体も、本人の状態像等に応じて最も制限の少ない方法により行わなければならない。
- 3.一時性
- 身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること
- *「一時性」の判断を行う場合には、本人の状態像等に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定する必要がある。
(2) 手続きの面でも慎重な取り扱いが求められる 仮に三つの要件を満たす場合にも、以下の点に留意すべきである。
- 1.「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかの判断は、担当のスタッフ個人(または数名)では行わず、施設全体としての判断が行われるように、あらかじめルールや手続きを定めておく。特に、施設内の「身体拘束廃止委員会」といったような組織において事前に手続き等を定め、具体的な事例についても関係者が幅広く参加したカンファレンスで判断する体制を原則とする。
- 2.利用者本人や家族に対して、身体拘束の内容、目的、理由、拘束の時間、時間帯、期間等をできる限り詳細に説明し、十分な理解を得るよう努める。その際には、施設長や医師、その他現場の責任者から説明を行うなど、説明手続きや説明者について事前に明文化しておく。 仮に、事前に身体拘束について施設としての考え方を利用者や家族に説明し、理解を得ている場合であっても、実際に身体拘束を行う時点で、必ず個別に説明を行う。
- 3.緊急やむを得ず身体拘束を行う場合についても、「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかを常に観察、再検討し、要件に該当しなくなった場合には直ちに解除すること。この場合には、実際に身体拘束を一時的に解除して状態を観察するなどの対応をとることが重要である。
(3) 身体拘束に関する記録が義務づけられている
- 1.緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録しなければならない。 【参考】 ★介護保険指定基準に関する通知 「緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録しなければならないものとする」
- 2.具体的な記録は、後載の「身体拘束に関する説明書・経過観察記録」を用いるものとし、日々の心身の状態等の観察、拘束の必要性や方法に関わる再検討を行うごとに逐次その記録を加えるとともに、それについて情報を開示し、ケアスタッフ間、施設全体、家族等関係者の間で直近の情報を共有する。 この「身体拘束に関する説明書・経過観察記録」は、施設において保存し、行政担当部局の指導監査が行われる際に提示できるようにしておく必要がある。
- 出典:「身体拘束ゼロへの手引き」(平成13年3月:厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」発行) :「高齢者虐待防止ハンドブック」(平成18年12月:大阪府健康福祉部高齢介護室)
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